私たちは物事を考えるときに、無意識に偏った考え方をすることがあります。これを「認知バイアス」といいます。認知バイアスがあることを認識し、対処するための方法を学びましょう。この学習の目標は以下の3つです。
- 認知バイアスについて説明できる
- 代表的なバイアスを学ぶ
- 診断テストで自分の傾向を知り、対処方法を見つける
認知バイアスとは
Bias=先入観、偏見、思考の偏り、ひずみ など
私たちは普段、たくさんの情報を処理しています。毎回、正確に処理するのはとても疲れるので、パターンにあてはめたり省略したりすることで「ショートカット」をすることがあります。このショートカットの結果、判断が偏ってしまうことを「認知バイアス」といいます。
例えば、以下のような行動は認知バイアスに拠るものです。
- 毎日、同じコンビニで同じ食事を買って食べる
- 本当は他のお店のほうがおいしくて安い食事が食べられるかもしれない
- 食事を毎回考えるのは頭を使うので、満足はしていないが同じ食事を繰り返す
- スマホに「地震速報」が通知されたのに「今回も大丈夫だろう」と何もしない
- 本当は地震速報を確認して、避難行動をしなければいけない
- ほとんどの地震速報は自分とは関係のない場所についての通知なので、軽視してしまう
- 「いいね」がたくさんついている商品が欲しくなる
- 本当はより良い商品や自分に似合う商品が他にあるかもしれない
- 多くの人が「良い」と思っているものを良いとしてしまう
多くの人がSNSを利用していますが、SNSのアルゴリズムは「好きなもの」や「興味がありそうなもの」を優先的に表示するようになっており、結果として認知バイアスがさらに強くなる傾向があります。
バイアスの例
バイアスはいくつかの種類に分類することができます。具体的な例を見ながら、代表的なバイアスの種類を学びましょう。
確証バイアス:信じたいものだけ信じる
自分が良いと思うもの、自分が知っているもの、自分にとって都合の良いものしか見ないバイアス。
- 自分の政治思想と一致したニュースしか見ず、反論が受け付けられなくなる
- YouTubeで犬の動画や猫の動画ばかりみてしまう
- 良い成績が取れそうな授業だけ受講してしまう
正常性バイアス:いつも通りと思い込む
事故や災害などの非常時でも「自分には大きな問題は起こらない」と考えるバイアス。
- 健康診断の結果が悪くても治療や対応を後回しにしてしまう
- 防犯対策や防災対策を行わずに過ごす
- ギャンブルで負けを取り戻すために賭け続けてしまう
アンカリング:最初の情報に引きずられる
最初に聞いたもの、目にしたものが良いと感じるバイアス。
- 「通常であれば30万円のところ、本日限り5万円!」と聞くと安く感じる
- 「A定食8,000円」「B定食5,000円」「C定食3,000円」であれば「B定食」がよく売れる
- 「ワクチンは危険?」というタイトルの文章は、内容がどうであれワクチンが危険な印象が残る
ハロー効果:目立つ特徴ですべてを評価する
見た目などの印象により、その人の能力についても同じ傾向にあると考えてしまうバイアス。
- 有名大学出身者はだれでも仕事ができると思ってしまう
- 整った容姿の人は性格が良いと思ってしまう
- 有名ブランドの商品が実際の価値以上の高値で取引される
バンドワゴン効果:みんながやっているから
多数の行動や意見が良いと考えてしまうバイアス。
- 行列のできるラーメン屋さんは美味しいと思ってしまう
- 選挙で、優勢だと報道されている候補者に投票したくなる
- 人気インフルエンサーのおすすめ商品を良いと思ってしまう
単純接触効果:何度もみるものに好感
繰り返し見たり聞いたりすると好感度が高まるバイアス。
- 同じ広告を繰り返してみるうちに、その商品が気になってしまう
- 何度も聞いている音楽を好きになってしまう
- SNSやテレビでよく見る芸能人の発言のほうが正しいと思ってしまう
これら以外にも色々なバイアスが存在するので、調べてみましょう。
認知バイアスに対処するには
認知バイアスは素早い判断をサポートしてくれますので、必ずしも認知バイアスが悪いわけではありません。しかし、自分にも認知バイアスがあることを知り、それに対処していく方法を知っておくべきです。
「いつもと違う情報」を手に入れる
情報ソースの偏りはそのまま思考の偏りにつながります。いろいろな情報源をもち、多様な価値観を学びましょう。
例)テレビをみる、新聞を読む、SNSから離れる、世代の違う人と交流する など
時間に余裕を持って行動する
短い時間の間に判断をしなければいけないとき、認知バイアスの効果が強く現れます。時間に余裕を持って行動することを心がけ、判断は慎重に行いましょう。
例)朝早く起きる、行動の優先順位を見直す、計画を立てる など
感情をコントロールする
怒り、興奮、不安など、強い感情があるときは認知バイアスに影響されやすくなります。強い感情があるときは意思決定や判断を先送りにしましょう。
例)アンガーマネジメントをする、人に相談する、よく眠る など
診断テスト
自分の認知の傾向を理解するために、診断テストをやってみましょう。