情報社会で必要とされるクリティカルシンキング(批判的思考)について学びます。この学習の目標は以下の3つです。
- クリティカルシンキングの定義を説明できる
- 「事実」と「意見」「不確定情報」を区別できる
- 情報の真偽を確かめる手順を説明できる
目次
クリティカルシンキングとは
クリティカルシンキングの定義
クリティカルシンキングとは、物事の前提や根拠を疑い、客観的、論理的に分析し、本質を見抜く思考法です。
クリティカルシンキングの効果
クリティカルシンキングによって、先入観や思い込み、感情的な反応を除いて、冷静に考える力が身につけられます。客観的な視点から情報を分析、評価することで、より合理的な結論を導くことができます。
クリティカルシンキングが必要なのは誰なのか
クリティカルシンキングは情報社会に生きているすべての人に必要な思考法です。日々の判断や消費行動、投票など、情報の判断を誤ると生活に直接的な影響があります。
クリティカルシンキングが必要な理由
- 情報量の爆発:スマートフォンやSNSの普及、AIの発展により、流通する情報量が爆発的に増えています
- 情報の拡散スピード:デジタル情報は短時間で世界中に拡散します
- 情報の可塑性:デジタル情報は加工や編集がしやすく、フェイク情報も簡単に作ることができます
「クリティカルシンキング」と「否定」との違い
クリティカルシンキングの過程で前提や根拠を疑うことは、相手からみると否定していると見なされることがあります。
否定では、相手の意見の価値や相手の評価を下げる目的がありますが、クリティカルシンキングは相手と一緒に考え、より良い答えを見つけ出すことを目的とします。
偽情報の事例
コロナ禍における偽情報
- コロナ禍により中国からの輸入が止まり、トイレットペーパーが不足する
- お湯を飲むことでコロナを予防できる
- ワクチンを接種すると遺伝子が組み替えられる
災害時の偽情報
- 地震によって動物園から動物が逃げ出す
- ガスタンクが爆発して有毒なガスが発生し、外出禁止令が出された
- 今回の地震が人工地震である
外国人に関する偽情報
- 在留外国人による犯罪が急増している
- 在留外国人が優先的に生活保護を受給している
- 外国人労働者が日本人の賃金を引き下げている
なぜ偽情報が生成/拡散するのか
偽情報が生成される理由
| 金銭的動機 | アクセス数を増やして収入を得るため |
|---|---|
| 政治的や思想的な動機 | 世論を誘導するため |
| 嫌がらせ、愉悦 | 人を傷つけたり、混乱を楽しむため |
| AIのハルシネーション | AIの幻覚により、嘘がもっともらしく生成される |
偽情報が拡散される理由
| 情報源を確認していない | 誰がどのように発信した情報なのかを確認していない |
|---|---|
| 切り抜かれている | 動画や発言の一部を切り抜いて、都合の良い内容のみ取り上げている |
| もっともらしい | 文章に説得力があったり、一貫性があるように見える |
| 満足感や高揚感がある | 自分の知識を少しだけ上回る(理解できる)情報は魅力的に見える |
信頼できる情報の見分け方
正しい情報も誤った情報もたくさん存在する中で、信頼するべき情報の基準について考えましょう。
| 情報源が明記されている | 情報の発信者や、元になった情報源が書かれている |
|---|---|
| 情報が検証できる | 一次情報へのリンクや参照先が書かれている |
| 情報が再現できる | 複数の独立した情報源で、同じ情報を確認できる |
| 利害関係が明記されている | 情報提供者の立場や意図が明らかである |
| 時間が明記されている | 情報の公開日や更新日が書かれている |
事実と意見の違い
| 事実(Fact) | 意見(Opinion) | |
|---|---|---|
| 再現性 | 誰でも同じ結果が得られる | 人によって結果が異なる |
| 主観と感情 | 主観や感情を含まず、客観的である | 主観や感情を含み、客観的ではない |
| 反証可能性 | 検証方法があり、反証可能性がある | 良し悪しなどの評価が含まれており、検証が難しい |
事実と意見の例
- 今日は寒い:意見。気温の感覚は個人によって異なり、客観的に検証できない
- 気温が10度である:事実。温度計で測定することで再現可能である
- このYouTube動画はおもしろくない:意見。個人の感覚による主観的評価である
- このYouTube動画は10万回再生された:事実。再生回数は検証可能である
- 災害時、行政の対応は遅すぎる:意見。遅いか早いかは状況により基準が変化する
- 災害時、支援物資の到着まで72時間かかった:事実。到着までの時間は測定可能である
必ずしも「意見」が悪いわけではなく、「事実」と結びつけることで主張を強くすることができます。例えば、「これまでこのYouTuberの動画は100万回再生されることが多かったのに、今回の動画は10万回しか再生されていないことからわかるように、この動画はおもしろくない」ということができます。
事実と意見と不確定情報
「事実」と「意見」に加えて「不確定情報」を設けて3分類にすると情報をより正確に理解することができます。
| 事実 | 観測、測定、検証が可能な客観的情報 |
|---|---|
| 意見 | 価値判断、感情、予測を含む主観的情報 |
| 不確定情報 | 伝聞、出典不明、未確定など検証が難しい情報 |
事実と意見と不確定情報を見分ける練習
問題文:昨日、地震があったが、本当に怖かった。震度5弱だったらしい。
- 「意見」はどれですか
- 本当に怖かった
- 震度5弱だったらしい
- 昨日、地震があった
- 「不確定情報」はどれですか
- 震度5弱だったらしい
- 昨日、地震があった
- 本当に怖かった
- 「事実」はどれですか
- 昨日、地震があった
- 震度5弱だったらしい
- 本当に怖かった